風がおもてで呼んでゐる
宮澤賢治の詩による、ソプラノデュオのための歌曲です。
- 風がおもてで呼んでゐる
風が おもてで 呼んでゐる
「さあ起きて 赤いシャッツと
いつもの ぼろぼろの 外套を着て
早く おもてへ 出て来るんだ」 と
風が 交々 叫んでゐる
「おれたちは みな
おまへの 出るのを 迎へるために
おまへの すきな みぞれの粒を
横ぞっぽうに 飛ばしてゐる
おまへも 早く 飛びだして来て
あすこの 稜ある巌の上
葉のない 黒い 林のなかで
うつくしい ソプラノをもった
おれたちの なかの ひとりと
約束通り 結婚しろ」 と
繰り返し 繰り返し
風が おもてで 叫んでゐる