ヘンデルのシャコンヌ(chaconne)

オーケストレーションの勉強のため,ヘンデルのシャコンヌ(HWV_435 鍵盤曲)を編曲しました。
編成は一管です(木管各1 + Horn2,Trumpet,Trombone +Harp + Timpani + 弦5部)。
スコアはin Cで, 装飾音は奏者毎に違いのないように、記譜してあります。
(装飾音は、一応バロック様式にしてます。)

木管を2管にしよかと迷いましたが、この曲では2管はいらなそうなのでやめました。
代わりにハープを入れてみました。
2管の使い方を調べてみると、時代を追って変わっているようでした。

  • 1,2番は独立した旋律(和音ではなく)を担当する。純粋にソロ2本。
      典型はバロックです。現代の室内管弦楽もこの傾向にあります。
      つまりポリフォニーという事です。
  • 和音をならすときだけに2番が参加。
      旋律を2本での重複(a2)することはあまりなく、ほとんど1番だけのソロ。
      Beethovenの中期ぐらいまではこのパターンで、楽器本来の音色が際立ちます。
      Beethovenは、なにをやっても上手で万能です。
      あのStravinskyがBeethovenのオーケストレーションは素晴らしいと言ってましたが
      本当にBeethovenのオーケストレーションはすごいです。
  • 常に2本が和音(3,6度とか)になるように重ねて使う。
      ソロはすくなく、旋律(和音ではない)はa2で重ねられます。
      Brahmsがよくこのやり方を使っていて、重厚な感じが出ます。
      ただ、変化があまり出ないので、色彩的とはいえないですし、
      同じ楽器のユニゾン(a2)は、奏者毎にピッチが代わりソロとは音色が変わってしまうので、
      楽器本来の音色とは違って濁ります。
      普通、全体音量が大きい時、弦楽器の音量とかと対抗するため重ねます。
      これは3管4管編成でも同じで、Mahler/R.Straussもそういう重複を多用しています。
  • 他の楽器と旋律(和音ではない)と混ぜるために使う。
      これは混合音色というもので、Mahlerがよく使います。

今回編曲してみて、Handelのいいところがたくさん分かりました。

  • 複雑なポリフォニーではなく、古典派等につながるような、未来指向な書法です。
      必要最小限の声部で、最大の効果がある。これ以上の声部は必要ないというような感じ。
      元にないものを追加するとヘンテコな感じになってしまいます。
  • 形式的な効果が考慮されている。
      各変奏の後半でのカデンツは、4声体書法(いろいろ)から、
      バスだけのオクターブまで様々な書法があり、飽きさせないように作られています。
      また、盛上がり部分にだけ半音階的な和声を置くなど、形式と効果が考えられています。
  • 明るくて、センスがいい。
      旋律や、テクスチャ選択のセンスは抜群で、
      聴いていて楽しい気分になります。
 シャコンヌ(Chaconne) : G-dur (Original : G-dur)
 オケ版(PDF)  音源(mp3)

  中学一年生の頃、イダ・プレスティ&アレクサンドル・ラゴヤのギター2重奏で、
  はじめて聴きました。大変ロマンチックな(良い)演奏で、すぐ好きになりました。
  後年、ピアノでも弾いたりしましたが(鍵盤曲としては簡単)、
  プレスティ&ラゴヤような演奏は難しいです。
  編曲は、バロックにも関わらずロマンチックになるようにしました。

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