モードのフーガ

フーガは「調性賛歌」と言われるように、 調域のコントラストで全体構造が作られます。
モード(旋法)は長/短調ほどには、コントラストが明確ではないので、
フーガには向かない組織です。
ただ、それでもモードのフーガは(ショスタコービッチなどにより)
これまで、たくさん書かれてきました。
モードのフーガには、長/短調のようなダイナミックはありませんが、
透明で静的な魅力があります。

M.Ravel:「クープランの墓 フーガ」 分析楽譜(PDF)   音源(mp3)
  このフーガは、作者自身が「学習フーガのパロディ」と言っているように、
  おおむね学習フーガの形式に沿っています。
  各パート書法は旋法的で、かつ縦の和音も3和音を基本に協和的です。
  強進行(モードのV-Ⅰなど)により、段落が明確になるよう和声付けされています。
  全体として"ちまっと"したフーガですが、Ravelの精緻さがよくわかります。
  ここでは、弦楽四重奏に編曲してみました。
  原曲は3声なので、本当は4声(四重奏)は不要なんですが、
  Piano曲なのでパートの音域がとても広く、3重奏ではカバーしきれません。
  なのでチェロを音域が足りない時の補助にしています。出番はほとんどないです。

自作:「弦楽四重奏のフーガ」  楽譜(PDF)   音源(mp3)
  書籍「フーガ書法」(山口博史 著)の最後に載っている
  「style Ravel(弦楽四重奏のフーガ)」(川崎真由子 作)のテーマで自作しました。
  本の範例を打ち込んで、聴いてみた感想としては
   (ここでは著作権の関係で載せていませんので、興味のある方はご購入ください)
   ・各パートはRavel風で流暢(作者は耳がよさそう)。
   ・縦の和音に不協和が多く、和音進行/転調がRavelぽくない。
     上記「クープランの墓 フーガ」でも書いたように
     Ravelは、縦の和音ができるだけ協和音になるようにしてあり、強進行します。
   ・音が暗い感じの(ショスタコのような)ところがある。(チェロのアルペジオ部分など)
   ・耳の良さでゴリ書きしているような印象を受ける
  です。
  
  では自作に関しですが、初めにRavelスタイルではないので、ご注意ください。
  次に、元のテーマの最後は変えています。川崎様すいません。
  ゼクエンツのようで、フーガ的でなかったことと難しかったのが理由です。
  
  作っていたら、途中でなんとなく飽きてしまって、
  和音伴奏(ディーリアス風)にしたり、サラバンド風にしたりと、
  学習フーガの形式どころか、大前提のポリフォニーをも逸脱してしまいました。
  ただ最後のストレッタ&コーダは、緊張感のある感じで仕上がったと思います。

自作:「ドヴォルザークの主題によるフーガ(弦楽四重奏)」  楽譜(PDF)   音源(mp3)
  ドヴォルザークの交響曲8番の冒頭主題でフーガを作りました。
  モードではないですが、少しモードがかってます。
  交響曲8番を聴くと、この主題がとても素敵なので、いつも
  何回も聴きたいと思うんですが、1楽章に3回しか出てきません。
  それもそのうち1回は半音階スケールの動きが後ろに入っていて、
  冒頭と全然違うので、実質2回しか聴けません。
  それで、フーガにすれば飽きるほど聴けると考えました。
  方針は以下の通りです。
   ・変応すると旋律が変わるので、変応しない。
   ・元の和声付けになるべく従う。そのため四六の和音があり,対旋律(C.S)が転回できない。
   ・なるべく完全な主題の形にする。
    ストレッタ部はテーマ後ろを削ってゆくので、ストレッタ部はなしとし、
    その代わりテーマ上でいろいろな模倣をしてみる。
  
  提示部1は、交響曲8番の和声付けのままなので、あまりポリフォニックではなく
  (シューマンの4つのフーガのような)和声付けっぽい感じです。
  
  技術的には、「不協和の注入」というのを使っています。
  これは、例えばA-Cの3度音程の間にいきなりHを挿入するといった手法で、
  この場合には、Aが次にGに下降し、さらにHがAに下降することで不協和が解決されます。
  この音集合(2度のクラスタ)は、J.S.BachにもHが掛留音となってよく現れますが、
  「不協和の注入」では、協和音にいきなり跳躍で不協和音をぶつけます。
  非和声音としては分類できない方法ですが、独自なアクセントが得られます。

自作:「二橋潤一先生の主題によるフーガ(弦楽四重奏)」  楽譜(PDF)   音源(mp3)
  二橋潤一作曲「ギター2重奏のためのPreludeとFugue」のフーガ主題によるフーガです。
  ギター2重奏というマイナーな編成で、出版楽譜は「現代ギター」の付録だけなので
  知られていないし、私も実際に聴いたことはないですが、すごい曲だと思います。
  私のなかでは「モードのフーガ」の代名詞です。
  なにしろ作曲技術がすごくて、
  Bachの声部書法上で、近代フランスのモード(旋法)和声が鳴り響きます。
  この曲でかれこれ20年ぐらい勉強させてもらってます。
  私が思うに、日本では(たぶん世界でも)和声・対位法で二橋先生の右に出る人はいないし、
  スタイル和声(特定の作曲家の様式で作曲する)についても、知る限りピカイチです。
  これは弟子の贔屓目ではなく、事実です。
  それで、今回フーガをつくるに当たって、たくさんの部分(提示部、ストレッタ等)を
  参考にさせて頂き、結果としてパクリみたいになっているかもしれません。
  先生すいません。そろそろこの曲から卒業しようと思い、気張って作りました。
  なので、先生怒らないでください。お願いします。
  あと、二橋先生なら絶対に書かないような連続や対斜がたくさんあります。

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