J.S.Bachのフーガ

平均律クラヴィア曲集の4声フーガを中心に、主題類を分析したスコアと音源を載せます。
鍵盤用の大譜表だと、各声部の動きがわかりにくいので
何度も見たり弾いたりして、確認する必要がありますが、
こういったスコアを見ながら音源を聴くと、すんなり声部が頭に入ってきます。
特に、演奏する場合などには有効ですので、ご利用ください。
(なお、音源にはトリル、モルデントなどの装飾音は入れていません。)

 初めに作曲技術という点からみた、Bachのフーガと学習フーガの違いをまとめておきます。
  • 一人で弾けるように作ってある
      フーガの技法や、6声のリチェルカーレはもとより、
      無伴奏ヴァイリンのためのフーガといった驚くべきものもある。
      学習フーガは、大抵のものは一人では弾くことができない。
  • さまざまな工夫がされていて飽きない
      和声付,リズムなど、いろいろ変化がつけられている。
      対唱が半音階だったり、主題を転回/逆行/縮小/拡大など変形したり工夫がすごい。
      学習フーガは、主題の提示ごとに同じような和音付されるものが多い。
      Bachのフーガはこういった意味で、学習フーガに比べるとごつごつした感じがある。
  • 各声部には、たくさん休符がある
      4声でも3声部分が多くなっていて、
      このため主題の入りや模倣が明確で、段落がはっきりしている。
      学習フーガは、いったん4声がそろったら、休みなくずっとそのままが多い。
  • 形式
      当然だが、Bachのフーガは主題(曲)ごとに形式が違う(曲なので)。
      学習フーガは実習用なので、主題に関係なく形式が決められている。

平均律1巻 : C -dur  スコア(PDF)   音源(mp3)
  大譜表では,音価を短くして譜尾をつけないと、どの声部だかわからなくなりますが、
  スコアでは問題ありません。なので曲想にあわせて音価は倍にしてあります。
  主題冒頭の弱拍から始まる4つの音階進行が主要な音型で、いたるところに現れます。
  演奏する場合には、フレージングはこの音型を意識するといいでしょう。

平均律1巻 : Cis -moll  スコア(PDF)   音源(mp3)
  学習フーガでいうところの冒頭の対唱(C.S)は一度繰り返されれるだけで、二度と現れません。
  しかし、その中に含まれる要素が、リズム/音程の異なった2つのC.Sに発展し、
  主題と組み合わされ展開されていきます。
  こういった技巧的な内容にもかかわらず,フォーカスを失わず聴けるフーガの名曲です。
  スコアは、和声/対位法の師匠である酒井修先生から頂いたものを使っています。

平均律2巻 : D -durl  スコア(PDF)   音源(mp3)
  テーマの音型が徹底的に展開されます。
  ほとんど8分音符でできているフーガで、こういったものは学習フーガには見られません。
  8分音符の拍は,7度までを含めるとほとんど和声音となっていて、
  こうするのが8分音符主体のフーガの書き方のようです。
  スコアには、非和声音を丸してあります。

平均律2巻 : B -moll  スコア(PDF)   音源(mp3)
  半音階的和声連結や、転回形とのストレッタなど、
  平均律の中でも凝りに凝った長大なフーガです。
  ただし、スコアをみないと転回形はよく聞き取れません。

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