変化和音の課題
P.Hindemithの「和声学」にある変化和音の課題を実施してみました。
フランス和声では、変化和音にあまり重点を置かず、
5度の変質といった変化和音の一部のみ扱われる傾向があります。
近代の和声全般からすると、フランス和声は片手落ちの感が否めません。
それに対しP.Hindemithでは「変化和音」の項目を、転調よりも前に置いていて、
重要な技法として扱っています(変化和音が得意なんでしょう)。
なので、フランス和声の欠如をP.Hindemithで補うことが出来ます。
ただ、P.Hindemithの課題はつまらないので、実施するよりは
出来たものをサンプルとして聴くのがいいと思いました。
では、「変化和音とは何か?」というと(言葉で説明するのは難しいですが)
- 主調に含まれない(非常に遠い調の)三和音,七の和音である。
- 和音ー>変化和音、変化和音ー>和音で、
声部が半音進行で横滑りする。(その数が多いほど滑らかで遠い感じ)。 - 機能がはっきりと判別できない。
- 異名同音で記譜されることが多い。
例えばB♭m7-5のA♭をG#で,F♭をEで記譜するなど。
典型的なものとしては
- トリスタン和音(R.Wagner「トリスタンとイゾルデ」の冒頭和音)
- R.Strauss「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」のテーマの和音
変化和音は、たくさんの組み合わせがあり、とても面白く聴こえるので、
使い方を覚えると、いたるところで使いたくなります。
しかし多用すると、曲が散漫で取り留めのないものになってしまいます。
これを<変化和音の罠>といいます(<==勝手に命名しました)。
なので使う場合は、
- R.WagnerやR.Straussのようにテーマの一部(和音進行自体をモティーフ)とする
- 経過句や展開部、段落を突然切り替える時など、使う場所を考える
ちなみに、以下は個人的な見解ですが、
変化和音を多用する作曲家は、
- 節度を持って使うタイプ。R.Wagner/R.Strauss/C.Franckなど
- 脈絡なく多用するタイプ。P.Hindemith/V.D'Indyなど
後者の曲は、聴いていてしばらくすると飽きてきますが、
その理由は、変化和音の節操ない使用だと感じます。
音楽は細部の面白さだけでは成り立たないですから。
楽譜
実施(PDF)
数字は付けていません。
音源
課題58
両外声で数字の付いた課題です。
a)No.1(mp3)
a)No.2(mp3)
a)No.3(mp3)
a)No.4(mp3)
課題59
両外声の課題です。
a)No.1(mp3)
a)No.2(mp3)
a)No.3(mp3)