アルベニス『イベリア』ERITAÑA
ずっと昔からオーケストレーションしたかった曲で、念願かない編曲できました。
さすがに、1管では華やかな感じが出ないので、2管編成です。
木管各2(FluteⅡはPiccolo持ち替え) + Horn4,Trumpet2,Trombone3 + Timpani(3)+Harp + 弦5部
この曲は本当に名曲です。
『分析から理論へ』でも書きましたが、いろんな作曲家が絶賛しています。
機会があれば、是非聴いてみてください。
「 かつて音楽がこれほど多彩な印象に達した前例はないのである。 」
C.ドビュッシー 『コンセール・コロンヌ評 スペイン音楽』
『イベリア』第4集エリターニャについての評論
「私がピアノを識るのに大きな役割を果たし、私が熱烈に賛美し、
そして私にとっては、おそらくピアノ書法上の傑作だと思われる作品として、
アルベニスの『イベリア』を挙げておきましょう。」
O.メシアン『オリビエ・メシアン その音楽的宇宙』
O.メシアン, C. サミュエル著 戸田邦夫 訳
けれど、この曲集(特に3巻以降)は弾くのが無茶苦茶難しく、かつ譜読みも大変なので、
(20年ぐらい前までは)弾く人があまりいなくて、それほど知られていませんでした。
演奏会で聴けるのは「Triana トゥリアーナ」ぐらいだったように思います。
最近は、いろんなピアニストが弾く(挑戦する)ようになって
すこし有名になってきました。うれしい限りです。
さて、ピアノ曲のオーケストレーションについてですが、
以下がポイントです。
- たくさん弾いて曲の鳴りを良く知ること。
ピアノでの鳴り知らないと、オーケストレーションが陳腐になります。
陳腐というのは、偽物(編曲されたイージーリスニング)みたいになるということです。
『イベリア』は演奏困難なので、ここが難しいです。
- 左手アルペジオは原曲通りに音を鳴らし、右手の旋律なども原曲通りの音域にする。
ピアニスティックな高速アルペジオ等は無理なので、出来る限りということなんですが、
あまり勝手にアルペジオ音型を替えたりすると、上記同様、偽物みたいになります。
『イベリア』では、アルペジオは右手の旋律/和音とのぶつかりが緻密に計算されていて
音を変更すると、違うぶつかりが発生し響きが濁ってヘンテコになります。
全12曲のうち5曲(+ 遺作のNavara、Eritañaは含まれていない)を編曲しています。
ラヴェルも『イベリア』を編曲しようと考えたようですが、編曲権をアルボスが先に持っていた(先に編曲していた)ので、 代わりに「ボレロ」を書いたという逸話もあります。
ちなみに、ラヴェルは「管弦楽の魔術師」とか言われますが、
実際にコンサート会場で聴いてみると、鳴りが悪くてしょぼい感じがします。
ラヴェルのオーケストレーションは、雑音系(雑音を混ぜるのが好き)で、
工夫はすごいですが、(その工夫のしすぎで?)すっきりと鳴らず、全体の音量が小さいです。
逆にアルボスの編曲は、指揮者だけあって鳴りも豪華で、ラヴェルが編曲したより良いと感じます。
ただ、知名度からいうとラヴェルが編曲したほうが、
『イベリア』がもっと有名になったかもしれません。
エリターニャ(『イベリア』第4集)
スコア(PDF) 音源(mp3)
オーケストレーションの系譜は、R.WagnerからA.Bruckner,R.Straussに続く分厚く鳴るものと、
C.Debussyから現代音楽に続く、(フランス風で)軽い色彩的なものがあります。
やはりオケでは分厚いほうが好きなので、この編曲も分厚いほうを目指しました。