ベートーヴェニアーナ1(Beethoveniana 1)
昔、
「音(のスタイル)は真似するとすぐにバレるが、形式/書式は真似ることができる」
と、村井嗣児先生がおっしゃっていました。
あれから随分時間が経ちましたが、最近、形式が少しわかるようになったと感じたので、
言われたように(意味が違うかもしれないですが)形式/書式を真似してみることしました。
古典派あたりの時代では、作曲家は形式(特にソナタ形式)に独創性を求めたかもしれません。
でも今では(前衛は分かりませんが)、形式には独創性を求められません。
形式/書式は、一種の雛形みたいになっていて、真似しても問題なさそうです。
自分で考えてもベートーヴェン以上のものは絶対無理ですし。
ということで、今回は
Beethovenの「弦楽四重奏曲No1. op18-1 一楽章」
の形式/書式をまるまる真似しました。
真似の基本方針(できれば)として、
呈示部・再現部・コーダは
- 同じ構造(小節数、サイズ)になるように、モティーフを作成し当てはめる。
- フレーズの雰囲気(ゆったり、急速など)や動きをあわせる。
- 音型・書式(伴奏形,ユニゾンなど)も、出来るだけあわせる。
- 主調は変える。ただし各部分の調性機能(TSD)が同じようになるようする。
調性機能(TSD)は自分の感じでかまわない。 - 音は自由に選ぶ。長短調でも旋法でもいい。ただ不確定にならないようにする。
- モティーフによって展開の仕方が決まり、形式/書式は真似が難しいので
形式/書式は真似ないで自由にする。全体の大きさも自由。 - 展開部では、調的に不確定な部分があってもいい。
スコア片手に、ちまちまと作ってみた感想としては
- ベートーヴェンがあらかじめ考えてくれているので、自然と曲がまとまる。
- 書式を変える場合、偶数小節単位(4,6,8)が最も自然に感じる。
これがBeethovenに4小節フレーズが多い理由だと思う。 - 構造を聴かせるような聴き応えのある感じになる。
ただ、一般に好まれるようなロマンチックな旋律とかとは、無縁。
ベートーヴェンは(モーツァルトとの比較で)旋律の才能がないとか言われますが、
きれいな旋律はたくさんあり、そんな風に思ったことはないです。
もしかすると、こういった作りのため、そう感じる人がいるのかもしれません。 - 音階やⅤ-Ⅰのカデンツなどは、そのままでは古典派丸出しで使えない。
別のものにするか、旋法の音階にするなど工夫が必要。 - フレーズを考え出すのは、普通の作曲とほぼ同じ。結構大変。
- 転調を同じサイズにあわせるのは難しい。2~4小節ぐらい増えたりする。
- あまり気にならないが、結果的に様式が入り混じって折衷する。
これは訓練で克服できると思う。 - 音自体は自分のものだが、なぜか自分のもの(曲)ではないような感じがする。
この方法は大変勉強になり、作曲の訓練として絶対にお勧めします!
この真似を敬意をこめて「ベートーヴェニアーナ」と命名します。
ベートーヴェニアーナ1(Quartet)
楽譜(PDF)
音源(mp3)
弦楽四重奏曲の編成でのソナタ・アレグロです。
ベートーヴェン「弦楽四重奏曲No1 一楽章」の形式・書法を真似しました。
元曲はF-durで、ここではf-mollにしています。
出来上がってから、つまらない部分を再度推敲しましたが、
冒頭モティーフの使いすぎで、くどい感じになってしまいました。
形式分析しましたので、表を付けます。
分析表(PDF)